吉岡のおじいちゃん、お元気ですか?
ゆみかです。
こうやっておじいちゃんにお手紙を書くのはいつぶりでしょうか。
おじいちゃんとの最後のお別れの式で、「これからも天国からあゆみとさとみとゆみかの3人を温かく見守っていてね」とお手紙を読んで以来でしょうか。
あれから15年、私は今21になり、家族や友達、先生など様々な人々との出会いと愛に恵まれてここまで大きくなりました。
おじいちゃんも変わらず、優しくあたたかい笑顔で私たちみんなのことを見ていてくれているのではないかと思っています。
今ゆみかは半年ちょっとの留学で始めて家を離れ、台湾で生活をしています。
残すところあと1ヶ月、やっと慣れてこれからここで出会った友達とももっと仲良くなりたいと思っているところでお別れの近づく時になりました。
大学での生活もあと残すところ1年ほどで、春からは本格的に就職活動も始まります。
私が小学校に入った頃からお母さんが家でホームステイを受け入れてくれるようになり、世界のいろんな所から来るお姉さんたちに興味を持ち、それが楽しくて、そこから私も国境を越えていろんな人に出会いたいと思うようになりました。
そして上にも書いたけど、家族や友達、先生など愛や心を持って接してくれる人々の下で人を愛することの大切さ、すばらしさを学びました。
今はこんなにすてきな人たちとの出会いの上に私がいるということを強く感じ、私もそんな心でこれからも出会うたくさんの人たちに愛を伝えられる人になりたいと思っている日々です。
将来はフライトアテンダントになりたくて、今は自分に向き合いつつ台湾で頑張っています。
今日おじいちゃんにお手紙を書いたのは、授業中ふとしたことからおじいちゃんのことを思い出したことから始まります。
授業中、日本に帰ったら就職活動用の写真を写真館に撮りに行こうと考えていました。
そしたらおじいちゃんのことを思い出して。
おじいちゃんがとても写真を撮ることがうまかったこと、普段の日々や一緒に出かけるとき、そしてゆみかの誕生日、ピアノの発表会とかいろんな場面でカメラを持って横にいたおじいちゃんを思い出したんです。
そしてふと思ったの。「あ、おじいちゃんが今ももし生きていたら、おじいちゃんの撮った写真でエントリーしたかったな」って。
ゆみかはすっごくおじいちゃん子だったから、そう言ったらおじいちゃんどれだけ喜んでくれるだろう、私もそうできたらどれだけ嬉しいだろう、幸せだろうと。
そう考えたら授業中なのに涙が止まらなくなりました。
ぼろぼろ落ちる涙。
おっきな粒になって、おじいちゃんとのいろんな思い出も一気に頭の中に浮かびます。
国鉄からJRになって、別府駅で制服に包まれてかっこよく働いていた自慢のおじいちゃん。
そしてお母さんやおばあちゃんに手を引かれ、最後は「おじいちゃーん」と叫びながら走って会いに行ってたこと。そしてその時のおじいちゃんの笑顔とだっこ。
休みのときはいつも白い車に乗ってラクテンチかサファリに行ってたね。
だからおじいちゃんがお仕事に行くのが嫌で泣いてわがまま言ってたことも。
習字も上手くて、いつもおじいちゃんの棚には筆とすずりと墨があった。
その棚は今でもおじいちゃんのにおいがします。
病気になってから、手があがらなくなったおじいちゃん。写真も習字もできなくなって、ゆみかとも遊びにいけなくなって、なんで病気になったんだろうと思ってたこと。
だけどそれでも毎年と同じようにお正月には里帰りして、みんなですき焼きしておじいちゃんがこたつの一番えらいとこで笑ってたこと。そしてそのひざの上が私の特等席だったこと。
いつもと変わらない幼稚園に行く朝、起きたら突然お母さんから「おじいちゃんが亡くなった」と聞いて信じられなくて、でも悲しくてその場でずっとずっと泣き崩れたこと。
そしてそれはいつまでもゆみかの横にいるおじいちゃんとして、その年小学校に上がった運動会も、中高の入学卒業、民謡の発表会や成人式、何かがある度に一番におじいちゃんに見せたかったと今でもよく思っていることを。
思い出したどれもが、全て一枚一枚の写真のように頭の中に浮かびました。
寂しいとか、悲しいとかそんな感情ではなく、その鮮やかさやその時その時で感じた気持ちが一気に出てきたことにとても私自身びっくりして感情を抑えることはできませんでした。
今日は一番後ろの席に座っていたこと、隣の男の子が寝ていたことがよかったと少し思いながら、涙を落としては気持ちを落ち着かせようとして、でもまたすぐ思い浮かんでは涙を落として…そんな授業最後の30分でした。
おじいちゃんがそばにいるのかと思ったよ。
今は見えないけど、あの時のようにおじいちゃんがゆみかをだっこしてくれてるかとも思った。
それくらいとても思い出したんです、本当に。
お父さん、お母さん、あゆみもさとみもみんな元気にしています。
おばあちゃんは一人で寂しいときもあるかもしれないけれど、近くにいる分一緒にいれる時は会いに行っています。
あゆみはもうすぐ高校受験で、さとみも幼稚園の先生になるために短大に通っています。
ずっと妹、妹と思っていたふたり。だけどふたりも最近特に大きくなっていると感じることもあったりで。
昔はけんかばっかりだったけれど、姉の私がふたりに支えられていることってとても多かったりします。
今日おじいちゃんがゆみかの中に出てきたことは、何かとても意味があるような気がしました。
改めて、おじいちゃんも空の上から、そしてたまに横に来てゆみかを守ってくれているのかなって思ったりしました。
今は時々寂しかったり、大変だったり、そして就職活動にも不安になる時もあるけれど、がんばれって、みんないるよって、大丈夫と、そう言っているかのようにも感じました。
おじいちゃんも一人で寂しいと思ったりもするのかな?
ゆみかの今日のこの気持ちが届くといいなと思います。
おじいちゃん、ありがとう。頑張ります。
これからも私たちのこと、優しくおじいちゃんのあったかい笑顔で見守っていてください。
優未香